かつらけいのすけの 熱唱カラオケ塾 2003年10月号

「さくら(独唱)/森山直太朗」

先月のカラオケ塾は「カラオケで癒されてみよう」というテーマで「世界に一つだけの花/SMAP」を選びました。なかなかの好評で、やはりロングセラーになる曲には、それだけのパワーがあり理由があるんだと感じました。そしてここに来て「世界に一つだけの花/SMAP」の人気を脅かすカラオケロングセラー曲があります。10月はみんなが歌ってみたいその曲を選びました。ご存じ「さくら(独唱)/森山直太朗」です。

共通点と作戦

「世界に一つだけの花/SMAP」と「さくら(独唱)/森山直太朗」の2曲には共通点がいくつか感じられます。どちらも昨年発売したアルバムからのシングルカットであること。メロディがシンプルで心地いいこと。歌詞の情景描写がたいへんすばらしいということ。などなど・・・
そしてもう1点、重要な共通点は「色恋を題材にしていない」ということです。世に氾濫するヒット曲のほとんどが、色恋を題材にしていることに大衆が疑問に思ったのかどうかは分かりませんが、「色恋無しでもヒットしうるこんなにいい曲があるんだ。」と感じさせてくれたのは間違いないでしょう。「おねいちゃん大好き」なあなたも、「もっと恋したいおっさん」であるあなたも、今回は色恋なし!いい曲だから歌うんだ!という姿勢を貫きましょう。そういう作戦が功を奏する場合もあります。(あれれ?)今回はそういう作戦です。

森山直太朗氏について

もう、知らない人はいないと思いますが、森山直太朗氏の母親は「さとうきび畑」などのヒット曲で知られるフォークシンガーの森山良子さん、祖父もジャズ・ミュージシャンという音楽一家に育ちました。が、本人はJリーガーになるつもりで高校時代はサッカーに明け暮れていたそうです。シンガー・ソングライターを目指したのは大学2年生の時で、インディーズでは「直太朗」の名で活躍していました。そこには「有名人の息子」と見られることへの反発も見え隠れします。「サッカーにも挫折し『何をやってもダメなヤツだ』とギターを弾いていて閉じこめていた思いが歌になって出てきた」のだそうです。「さくら」はインディーズ時代からライブのラスト・ナンバーとして歌われていて、ファンの間ではたいへん人気の曲だった様です。昨年10月にミニ・アルバム「乾いた唄は魚の餌にちょうどいい」でメジャー・デビューしたのですが、その時にアーティスト名を本名の森山直太朗にしました。そしてこのデビュー・アルバムに「さくら」は収録され、一気にスターダムを駆けのぼりました。やっぱり単なる二世タレントじゃないんです。

ファルセットは色っぽいのです。が・・

この「さくら」を歌うには「ファルセットボイス(いわゆる裏声)」が欠かせませんね。森山直太朗の人気の要因のひとつに「ファルセット」があると思われます。男性はファルセット(裏声)を上手く使えるようになれば、声域を1オクターブ近く広げることも可能になります。それにプラスプラスアルファー!たいへん色っぽく歌えるようにもなり、このカラオケ塾の購読層の願望(?)からいっても、是非身につけたいテクニックであると思います。が、誰でも簡単にマスター出来るテクニックではありません。森山直太朗氏も「生まれつきというか、自分の身体で響いていた。」と言ってます。

ファルセットの練習方法

一般の発声方法には、胸で共鳴させる「チェスト・ボイス」と頭で共鳴させる「ヘッド・ボイス」があります。ファルセットは後者の頭で共鳴させる「ヘッド・ボイス」ですので、頭のてっぺんに向かって空気を送るようなイメージで練習するといいでしょう。間違っても、胸の力で空気を押さない。喉で頑張らないようにしましょう。「大きくのびをして、あくびをしながら口の奥(軟口蓋)を広く空けて裏声で発声する。」というのも良さそうです。どうやっても上手く裏声が出せない人もいますので無理せず少しずつ練習してください。「夜空ノムコウ」の時にもお話しましたが、まずは「きたろう!」と目玉のオヤジのものまねから始めるのもひとつの作戦かもしれません。そのうちに、自然に響きの方法を体で覚えていけるでしょう。 ファルセットで良い響きが出せるようになれば、地声の響きも良くなります。頑張って練習しましょう。

僕らはきっと待ってる〜

全部をファルセットで歌う方法もあります。クラシックでいう「カウンター・テナー」であったり、「もののけ姫」で有名になった米良美一さんもそうですね。でも、この「さくら」は、「地声(表声)→ファルセット(裏声)→地声(表声)」と変化するところがいいのです。そこが色っぽくもあり、カッコイイのです。やってみると分かるのですが、初めはファルセットにすると極端に音量が下がると思います。 練習すれば徐々に音量も上がってくると思いますが、地声の方をやさしく、小さめに歌うという工夫も良さそうですね。マイクの使い方、口からマイクまでの距離を調節するのも手です。試してみてください。
森山氏がファルセットにしているところの歌詞の文字の色を変えて示しました。必ずこのとおりに歌わなくてはいけないわけではありませんので、あくまでも参考程度に練習にご利用ください。

僕らはきっと待ってる 君とまた会える日々を
さくら並木の道の上で 手を振り叫ぶよ
どんなに苦しい時も 君は笑っているから
挫けそうになりかけても 頑張れる気がしたよ

霞みゆく景色の中に あの日の唄が聴こえる

さくら さくら 今、咲き誇る
刹那に散りゆく運命と知って
さらば友よ旅立ちの刻(とき)〜変わらないその想いを 今


ファルセットは出しやすい音域があります。これには個人差があるので慎重にキーを選びましょう。パソカラホーダイなら何度も歌って試してみればいいですね。

私には、実はこう聞こえるのです。

この「さくら」、私の勝手な聞こえ方なのですが、私には「大切な親友との死別の歌」に聞こえるのです。そして歌詞を追えば追うほど、戦争のことを言っているのではないか?それも第二次世界大戦のことではないか?さらにそれは特攻隊のことではないか?と。
「さらば友よ またこの場所で会おう さくら舞い散る道の上で」
特攻隊員達は一様に、九段(靖国神社)の桜の下で必ず会おうと言って特攻、散華していったと聞きます。 現代の私達が彼らの命の犠牲の上に成り立っていることは事実ですが、そのようなことを真剣に考えたことがあったでしょうか?もちろん森山直太朗氏がそのようなことを考えてこの歌を作ったのかは定かではありません。しかし、私にはそう聞こえるのです。彼の新曲の「夏の終わり」が「戦争で失った最愛の人のことを思う女性のイメージ。」が、あるからでしょうか?森山良子さんの「さとうきび畑」のイメージからか?そういえば「世界に一つだけの花/SMAP」も「反戦歌だ」とする論評もありました。「日本の音楽界はお子ちゃま化してしまった」と嘆かれている昨今ですが、大人も納得できる「良い歌」が認められ始めたのだと、うれしく感じました。

マジな話もいいけど

堅い話ばかりだと、おねいちゃんは飽きちゃいますね。じゃあ、こんな話題はいかがでしょう? 「さくら(独唱)」はもちろんオリコンシングルチャートで1位を獲得していますが、母、森山良子さんも昭和45年に「禁じられた恋」で1位を獲得していて、親子2代での1位獲得なのだそうです。これは藤圭子さん宇多田ヒカルちゃん母娘に続く史上2組目!とのこと。「森山良子さんはフォークシンガーでねー『この広い野原いっぱい』って曲知ってる?『涙(なだ)そうそう』は知ってるよね?作曲がBIGINで、作詞が森山さんなんだよ。森山さんが、かまやつひろしさんの『いとこ』って知ってた?藤圭子さんはねーー。」とお話をふくらませていけば、みんなで「へえー、へえー、へえー」とテーブル叩いてくれるかも知れません。

今回は色恋なし!いい曲だから歌うんだ!という作戦(?)で書き始めましたが、最後はやはりウケを狙ってしまいました。とにかくいい曲なので、しっかり練習しましょう。パソカラホーダイでファルセットがバッチリきまるキーを見つけるんですよー。